食べられる再帰性反射材

 

 

 

 近年,液体を利用した光学デバイスが出現し,注目を集めている.液体は,可視光に対して透明なものが多く,適切に形状を制御することで光学デバイスを実現するのに優れた素材であることがわかってきた.

 一方,多くの食品も液体であることを考えると,食品も光学素子の素材として適している可能性が高い.もし,食品を素材とした光学素子が実現できれば,料理と組み合わせることで新たな演出を可能にすることや,人間の消化管の表面に設置することにより高精度な検査や診断が可能になることが期待できる.
 そこで,当研究室では食品を素材とする光学素子の実現を目標に研究を進め,食べられる再帰性反射材を開発した.開発した再帰性反射材試作品の写真を図1に示す.再帰性反射材は光源の方向に光を反射する光学素子で,身の回りでは道路標識や自転車の反射板などに使われている.照明とカメラを適切に組み合わせて再帰性反射材を撮影すると,画像中でとても明るく見えるため,画像処理用のマーカーとしてもよく利用されている.​通常の物はガラスやプラスチックを素材とするが,開発した食べられる再帰性反射材は寒天を素材としている.

 また,食べられる再帰性反射材の応用例を示すために,食品へのプロジェクションマッピング実験を行った.動画1の実験では,食べられる再帰性反射材をロールケーキの脇に設置し,それをマーカーとしてケーキ上に文字の投影を行った.ケーキの位置は再帰性反射材をマーカーとしてカメラで計測されており,その位置にあわせて文字の投影をおこなっているため,ケーキを移動させても投影は常にケーキの上に行われる.結婚披露宴に代表されるように高度な演出が期待されているシーンにおいて有用であると考えられる.また,動画2ではテーマパーク内のカフェテリアを想定し,トレイの上のパンケーキ上に映像が投影され,パンケーキの位置に応じてアニメーションが変化する様子を示している.

 

動画1 試作した寒天製再帰性反射材が光を反射する様子とロールケーキ脇に設置してプロジェクションマッピングを行った結果

動画2 テーマパークのカフェテリアでの実装を想定したプロジェクションマッピングのデモンストレーション

図1 試作した寒天製の再帰性反射材の写真

図2 試作した寒天製の再帰性反射材を利用してロールケーキへプロジェクションマッピングを行った結果の写真.投影前(左)と投影後(右).写真中右の方にある銀色の表面を持つ直方体が食べられる再帰性反射材とチョコレートを組み合わせたマーカー.

参考文献

  • Takahiro Uji, Yiting Zhang, and Hiromasa Oku : Edible Retroreflector (Full Paper), 23rd ACM Symposium on Virtual Reality Software and Technology (VRST ’17) (Lindholmen Conference Centre, Gothenburg, Sweden, 2017.11.08) / Proceedings [doi:10.1145/3139131.3139148] (acceptance rate 21%) (Best Paper Award)

  • 宇治貴大,張依婷,奥寛雅 : 食べられる再帰性反射材の提案と試作, 日本バーチャルリアリティ学会論文誌, Vol.22, No.4, pp.535-543 (2017) [doi:10.18974/tvrsj.22.4_535]